2008/02/06 [17:00] (Wed)
馬鹿馬鹿しい。
構っていられなくて腰を上げた。
「――逃げるの?」
ぴん、と空気が張り詰める。
そこらの天狐や人間なら腰を抜かしそうな殺気を浴びせても、彼女は全く動じない。
いつもいつも、そうだ。
逃げるのではない。一人になりに行くのだ。
それがどこか言い訳じみている事に気付きながらも、凌壽は歩を止めようとはしなかった。
**********
作品にしたら冒頭部分になるだろうお話。
天狐族の女性が主人公です。
構っていられなくて腰を上げた。
「――逃げるの?」
ぴん、と空気が張り詰める。
そこらの天狐や人間なら腰を抜かしそうな殺気を浴びせても、彼女は全く動じない。
いつもいつも、そうだ。
逃げるのではない。一人になりに行くのだ。
それがどこか言い訳じみている事に気付きながらも、凌壽は歩を止めようとはしなかった。
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作品にしたら冒頭部分になるだろうお話。
天狐族の女性が主人公です。
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2008/02/06 [16:54] (Wed)
凌壽《夢》
「晶霞!見て見て」
「……また来たのか」
「だって絶対似合うわ!」
また、来たのか。
両手に溢れんばかりの花を抱えて来た女に抱いた感想は、内包する意味は異なりながらも姉と同じものだった。
毎度毎度、よく飽きないものだ。
「あら凌壽、そこにいたの。まーたそんな暗い顔で、幸せ逃げちゃうわよ?」
優雅な物腰に儚げな所作に騙されそうになるが、馬鹿にされている事に気付いて眉根を寄せた。
「煩ぇ」
すると女はまー、とわざとらしい声をあげた。
「黙って欲しかったら笑ってみなさい?」
「晶霞!見て見て」
「……また来たのか」
「だって絶対似合うわ!」
また、来たのか。
両手に溢れんばかりの花を抱えて来た女に抱いた感想は、内包する意味は異なりながらも姉と同じものだった。
毎度毎度、よく飽きないものだ。
「あら凌壽、そこにいたの。まーたそんな暗い顔で、幸せ逃げちゃうわよ?」
優雅な物腰に儚げな所作に騙されそうになるが、馬鹿にされている事に気付いて眉根を寄せた。
「煩ぇ」
すると女はまー、とわざとらしい声をあげた。
「黙って欲しかったら笑ってみなさい?」
2008/02/02 [08:07] (Sat)
凌壽《夢》
貴方の死を目の当たりにした私の衝撃を、貴方は知らずに逝ったのでしょう。
ただ神性の結界の中で見ている事しか出来なかった私の悔しさなど、貴方に届きはしないのでしょう?
胸に走る痛みなど、悲しみの前に何も意味を持ちはしません。
貴方が朽ちたのなら私も朽ちるまで。
貴方の存在しない世界に生きるよりは遥かに幸せなこの結果も、私の心を癒しはしないわ。
だって貴方は、誰かの命となるのでしょう?
私は一人、天に逝くだけ。
一度として私を瞳に移さぬまま、貴方は逝ってしまうのですね――……
貴方の死を目の当たりにした私の衝撃を、貴方は知らずに逝ったのでしょう。
ただ神性の結界の中で見ている事しか出来なかった私の悔しさなど、貴方に届きはしないのでしょう?
胸に走る痛みなど、悲しみの前に何も意味を持ちはしません。
貴方が朽ちたのなら私も朽ちるまで。
貴方の存在しない世界に生きるよりは遥かに幸せなこの結果も、私の心を癒しはしないわ。
だって貴方は、誰かの命となるのでしょう?
私は一人、天に逝くだけ。
一度として私を瞳に移さぬまま、貴方は逝ってしまうのですね――……
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