2010/05/06 [16:37] (Thu)
だらだら書いてたけれど途中で詰んだ希日のお話。
季節は冬。
中途半端。
少し鈍く高めの音が規則的に響いてくる。
縁側で野良猫を構っていたヘラクレスはその音につられて振り返った。此処からは見えないが、菊が“お勝手”とかいうオプタニオンで夕飯を作り始めた音だ。
愛想を尽かされたと判断したのか逆にヘラクレスに愛想を尽かしたのか、猫はヘラクレスの手からひらりと抜け出して庭へ降りる。
そのまま一度も振り返らずに庭の茂みに消えた。もう日も暮れ始めたから、猫も夕飯を食べに帰るのかもしれない。
数瞬迷った後ゆっくりと立ち上がる。規則正しい音が続くオプタニオンへ行くことにした。
細い木張りの廊下は素足に優しく、日が差し込んでいた部分は未だ温かくて心地がいい。
辿り着くと、菊が背を向けて作業をしていた。割烹着というものを着て、三角の布を巻いている。
まだヘラクレスに気付いていないようで彼は作業を続け、切り終わった食材を丸い器へ移していた。脇では土鍋が火にかけられていて、グツグツと軽い音を立てて数本の木製の串を覗かせていた。
初めて見る料理である。
「にほん」
呼び掛ければ、手を止めて彼はゆっくりと振り向いた。
にこりと微笑まれて返す。ああ、やっぱり日本は可愛い。
土鍋の火を少し弱めてから割烹着で手を拭き、ぱたぱたとスリッパを鳴らしてこちらへ来た。
「どうしました?」
「俺も手伝う」
「! ありがとうございます。ではそちらの食材を鍋の中へ入れて頂けますか? ああ勿論手を洗ってくださいね」
「うん」
シンクは日本が作業をしているので一旦離れる。
また少し歩いて手洗い場へ。猫も触っているし、洗剤でしっかり洗ってしっかり落とす。
再び戻って、用意されているスリッパを履いてオプタニオンへ入り、先程示された、テーブルに乗せられた食材を手に取った。
いくつか見た事がある。
じっと食材を観察しつつ、一つ一つ土鍋に入れていく。土鍋の中には既に何種類か食材が煮込まれていて分からないものが殆どだった。この袋みたいなのは何だろうか。
粗方入れ終わって食材が入っていた笊を、シンクを使い終わった日本と入れ代わって水洗いする。
「お疲れ様です。後は細かい作業ですから……カセットコンロをあちらへ出してもらっていいでしょうか」
「……うん」
カセットコンロは前回来た折に使っているから分かる。食器棚の下段にしまわれているのだ。
箱毎出して縁側に続く和室へ向かう。庭が見渡せるとヘラクレスが気に入った為、食事などは皆此処で済ませるというのが暗黙の了解となっているのだ。
卓袱台の上にコンロをセットする。前回できちんと覚えた。
コンロをセットするということは、あの鍋を此処に乗せるということだろうか。
もしそうなら、日本には少し荷が重いかもしれない。
オプタニオンへ引き返すと、丁度彼が鍋掴みを手に鍋に手を掛けたところだった。
「にほん」
「わっ……びっくり、しました。今持って行きますから」
「いい。俺、持つ」
「えっあ、熱いですよ! これ使って下さい」
素手で持とうとした自分に慌てて日本は使っていた鍋掴みを寄越す。日本の体温が移ったそれを受け取って、鍋を掴んで持ち上げた。
後から他の物も運んでくるというので先に出る。縁側から入ってくる風が少し肌寒かった。
だらだら書いてたけれど途中で詰んだ希日のお話。
季節は冬。
中途半端。
少し鈍く高めの音が規則的に響いてくる。
縁側で野良猫を構っていたヘラクレスはその音につられて振り返った。此処からは見えないが、菊が“お勝手”とかいうオプタニオンで夕飯を作り始めた音だ。
愛想を尽かされたと判断したのか逆にヘラクレスに愛想を尽かしたのか、猫はヘラクレスの手からひらりと抜け出して庭へ降りる。
そのまま一度も振り返らずに庭の茂みに消えた。もう日も暮れ始めたから、猫も夕飯を食べに帰るのかもしれない。
数瞬迷った後ゆっくりと立ち上がる。規則正しい音が続くオプタニオンへ行くことにした。
細い木張りの廊下は素足に優しく、日が差し込んでいた部分は未だ温かくて心地がいい。
辿り着くと、菊が背を向けて作業をしていた。割烹着というものを着て、三角の布を巻いている。
まだヘラクレスに気付いていないようで彼は作業を続け、切り終わった食材を丸い器へ移していた。脇では土鍋が火にかけられていて、グツグツと軽い音を立てて数本の木製の串を覗かせていた。
初めて見る料理である。
「にほん」
呼び掛ければ、手を止めて彼はゆっくりと振り向いた。
にこりと微笑まれて返す。ああ、やっぱり日本は可愛い。
土鍋の火を少し弱めてから割烹着で手を拭き、ぱたぱたとスリッパを鳴らしてこちらへ来た。
「どうしました?」
「俺も手伝う」
「! ありがとうございます。ではそちらの食材を鍋の中へ入れて頂けますか? ああ勿論手を洗ってくださいね」
「うん」
シンクは日本が作業をしているので一旦離れる。
また少し歩いて手洗い場へ。猫も触っているし、洗剤でしっかり洗ってしっかり落とす。
再び戻って、用意されているスリッパを履いてオプタニオンへ入り、先程示された、テーブルに乗せられた食材を手に取った。
いくつか見た事がある。
じっと食材を観察しつつ、一つ一つ土鍋に入れていく。土鍋の中には既に何種類か食材が煮込まれていて分からないものが殆どだった。この袋みたいなのは何だろうか。
粗方入れ終わって食材が入っていた笊を、シンクを使い終わった日本と入れ代わって水洗いする。
「お疲れ様です。後は細かい作業ですから……カセットコンロをあちらへ出してもらっていいでしょうか」
「……うん」
カセットコンロは前回来た折に使っているから分かる。食器棚の下段にしまわれているのだ。
箱毎出して縁側に続く和室へ向かう。庭が見渡せるとヘラクレスが気に入った為、食事などは皆此処で済ませるというのが暗黙の了解となっているのだ。
卓袱台の上にコンロをセットする。前回できちんと覚えた。
コンロをセットするということは、あの鍋を此処に乗せるということだろうか。
もしそうなら、日本には少し荷が重いかもしれない。
オプタニオンへ引き返すと、丁度彼が鍋掴みを手に鍋に手を掛けたところだった。
「にほん」
「わっ……びっくり、しました。今持って行きますから」
「いい。俺、持つ」
「えっあ、熱いですよ! これ使って下さい」
素手で持とうとした自分に慌てて日本は使っていた鍋掴みを寄越す。日本の体温が移ったそれを受け取って、鍋を掴んで持ち上げた。
後から他の物も運んでくるというので先に出る。縁側から入ってくる風が少し肌寒かった。
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