2010/01/03 [03:53] (Sun)
【その他版権】 pop'n music
(ディオ、MZD)
「何で、人は争うんだろうか」
呟いた己を、MZDは苦笑して見つめるだけだった。
眼下では、人々が争い傷付け合い、幾多の命が散っていく。
中には、巻き添えになって死んでいく民間人の命もあって。
神に祈って死んでいく者、未練を叫んで死んでいく者、自らの死を自覚しないまま死んでいく者──。
叫びが、魂が、ディオの頭に直接響いてくる。
ガンガンと響いて、思わず目を閉じて耳をふさぐ。同じものを聞いている筈のMZDは平然と地上を見下ろしているらしかった。
微かに開けた目で盗み見れば、言葉に表せない複雑な表情を彼は浮かべている。
こちらに気付いたMZDは何かに気付いたような表情を浮かべた後、すっと軽く手をディオにかざした。
ふわりと軽くなる体。頭の中から声が消える。
礼を言えば気にするなと返された。そうして、彼はまた遙か下に広がる地上を眺める。
争いの火が燃えていた。
「本当は、助けたいんだろ」
「どうでもいいって言ったら嘘になるな」
「干渉しないのが創世神の掟?」
「ああ。……もどかしい時もあるけれど、仕方がないんだ。世界そのものであり創世神たる俺が歴史を変えたらいけないから」
「でも俺の時は」
「お前はたった一つの例外だよ。それでも変えてしまった事に変わりはないから、こうして面倒みてるんだろ?」
そう言って笑ったMZDは笑っているのに泣いているような、不思議な顔で世界を見下ろしていた。
彼が愛する世界、人々、この世界に属する全ての存在。
愛しているからこそ、MZDは彼らに手を伸ばせない。伸ばされた手を掴めない。
唯一の例外だというけれど、もしかしたら自分が助かった事はどこかで決められていた事なのかもしれない。
「哀しいな、神ってのは」
「おいおいお前もだろ?」
「俺は”生み出された側”だからな」
「なるほど」
MZDは頷くと苦笑を浮かべて目を閉じた。
眼下ではそんな世界<MZD>の思いも知らず、人間達が命を散らしていく。
悲しい光、哀しい焔、無念のままに死んでいく者達の命の音が、淡い輝きと共に消えていく。
かなしいと心が訴える。
ディオはMZDではない、だからこそ、彼の様に淡々と命を見つめる事が出来ない。
目を閉じたまま、微かな戦慄を彼の唇が紡ぎ始める。
音に共鳴するように命の音が響き出した。
「……レクイエム、か」
かなしい程に、奇麗な旋律。
だがそれは、人間達には聞こえない幻の星のうた。
こんなにも響いて、美しく、儚く、存在しているのに。
切ない。
涙の代わりに溢れるのは、彼の旋律に沿うように紡ぐメロディ。
重なって、離れて、溶け合って、広がってひろがって。
手を伸ばしてはいけないなら、せめて歌を、心を贈ろう。
その魂を鎮める為に、悼む者達を癒す為に、失われた命を惜しむ為に。
二人の神が紡ぐうたは、争いに決着がついた後も、惜しむように続いていたという。
その音を聴く事が出来たのは、音に還る魂と、其処に在る星<セカイ>だけだった。
+++++++
【配布元:Abandon】
ポップンの神様に10のお題より「手を伸ばしてはいけない掟。」
(ディオ、MZD)
「何で、人は争うんだろうか」
呟いた己を、MZDは苦笑して見つめるだけだった。
眼下では、人々が争い傷付け合い、幾多の命が散っていく。
中には、巻き添えになって死んでいく民間人の命もあって。
神に祈って死んでいく者、未練を叫んで死んでいく者、自らの死を自覚しないまま死んでいく者──。
叫びが、魂が、ディオの頭に直接響いてくる。
ガンガンと響いて、思わず目を閉じて耳をふさぐ。同じものを聞いている筈のMZDは平然と地上を見下ろしているらしかった。
微かに開けた目で盗み見れば、言葉に表せない複雑な表情を彼は浮かべている。
こちらに気付いたMZDは何かに気付いたような表情を浮かべた後、すっと軽く手をディオにかざした。
ふわりと軽くなる体。頭の中から声が消える。
礼を言えば気にするなと返された。そうして、彼はまた遙か下に広がる地上を眺める。
争いの火が燃えていた。
「本当は、助けたいんだろ」
「どうでもいいって言ったら嘘になるな」
「干渉しないのが創世神の掟?」
「ああ。……もどかしい時もあるけれど、仕方がないんだ。世界そのものであり創世神たる俺が歴史を変えたらいけないから」
「でも俺の時は」
「お前はたった一つの例外だよ。それでも変えてしまった事に変わりはないから、こうして面倒みてるんだろ?」
そう言って笑ったMZDは笑っているのに泣いているような、不思議な顔で世界を見下ろしていた。
彼が愛する世界、人々、この世界に属する全ての存在。
愛しているからこそ、MZDは彼らに手を伸ばせない。伸ばされた手を掴めない。
唯一の例外だというけれど、もしかしたら自分が助かった事はどこかで決められていた事なのかもしれない。
「哀しいな、神ってのは」
「おいおいお前もだろ?」
「俺は”生み出された側”だからな」
「なるほど」
MZDは頷くと苦笑を浮かべて目を閉じた。
眼下ではそんな世界<MZD>の思いも知らず、人間達が命を散らしていく。
悲しい光、哀しい焔、無念のままに死んでいく者達の命の音が、淡い輝きと共に消えていく。
かなしいと心が訴える。
ディオはMZDではない、だからこそ、彼の様に淡々と命を見つめる事が出来ない。
目を閉じたまま、微かな戦慄を彼の唇が紡ぎ始める。
音に共鳴するように命の音が響き出した。
「……レクイエム、か」
かなしい程に、奇麗な旋律。
だがそれは、人間達には聞こえない幻の星のうた。
こんなにも響いて、美しく、儚く、存在しているのに。
切ない。
涙の代わりに溢れるのは、彼の旋律に沿うように紡ぐメロディ。
重なって、離れて、溶け合って、広がってひろがって。
手を伸ばしてはいけないなら、せめて歌を、心を贈ろう。
その魂を鎮める為に、悼む者達を癒す為に、失われた命を惜しむ為に。
二人の神が紡ぐうたは、争いに決着がついた後も、惜しむように続いていたという。
その音を聴く事が出来たのは、音に還る魂と、其処に在る星<セカイ>だけだった。
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【配布元:Abandon】
ポップンの神様に10のお題より「手を伸ばしてはいけない掟。」
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