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少年陰陽師、オリジナル、偶にその他版権のネタ置き場
  2024/05/08 [22:15] (Wed)
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  2009/10/18 [23:53] (Sun)
【オリジナル】オルハル?


今後予定している「オルタナ編」の構想。
思いっきりnessシリーズのネタばれでもあるので隠し隠し。










※カフェは一般解放してる設定で。
ハルオル風味。





時刻は午後三時。名もなきカフェが最も賑わう時間帯。
休日ということもあって、友達連れの少女達が多い。
ハルミは双子が準備した紅茶やお菓子を運んでいく。馴染みの客もいたりして、声をかけながらの移動となる。
「いらっしゃい」
「ハルミさん!」
「久しぶりね。ゆっくりしていって」
「はいっ」
ハルミは音を立てずにそっとテーブルに紅茶とお菓子を置き、少女の笑顔を確認してから席を離れる。
双子のいるカウンター内へ戻り、注文がない事を確認してから溜まってしまっていた洗い物をする事にした。
元々家事は不得手ではない。
洗剤を流し終わり、布巾で水分を拭いていく。
ケーキ皿を拭き終わるかという瞬間、どくんと心臓が跳ね上がった。
「――っ」
「「ハルミさんっ!?」」
陶器の割れる高くも鈍い音が響き渡り、余韻が静けさを強制する。
集まる視線に気付かないのか、ハルミは血の気の引いた顔で手元を見つめていた。
様子のおかしいハルミに双子が声をかけようとした瞬間、彼女は弾かれたように踵を返して螺旋階段へ駆け寄る。
「ごめん、行ってくる!」
銀の軌跡だけを残して、彼女は風のように階上へと消えた。









大神界へ跳んだハルミが見た光景は、予想を遥かに凌いでいた。
抉れた大地はいくつもクレーターが覗いているようで痛々しい。此処が生物の住まない地域であったのが不幸中の幸いかと息を吐いた。
彼をなるべく傷つけたくない。
ふ、と上を見上げる。長いマフラーをなびかせて両手で顔を覆った男が、まるで慟哭するかのように空中で体を折っていた。
力の残梓か、バチバチと黒色の静電気のようなものが彼の周りで弾ける。
おもむろに、彼は右手を前へ突き出した。掌に力が集まり、電気を帯びた黒色の光球が現れる。
振り下ろされるかと思った腕は、しかし彼自身へと向けられた。

「――やめてっ!」

ただ無我夢中で飛び出していた。
彼に横から思い切り抱きつく。バランスを崩し、光球は彼ではなく上空へと放たれる。
二人の遥か上で光球は爆発し、煽られた二人は爆風で地面へと叩きつけられた。
痛みに呻き声が漏れたが必死で彼の体にしがみ付く。暫く揃って動けず、砂埃を風が巻き上げていって、二人の荒い息と自分の速い鼓動だけが聞こえていた。
しかし、息を呑んだ気配がすると同時に、彼の体はハルミの腕から擦り抜けて、上体だけを起こして視線を上げた時には彼がハルミを見下ろしていた。
逆光で表情は見えないが、口元が何かを堪えるように歪んでいる。
「……で」
「え……?」
「何、っで!」
どくん、と心臓が波打った。
ああ、そうか。きっと彼は。
思い出したのだ。彼の“最期”を。
胸が痛み、叩きつけられる激しい感情に体が竦む。
日が雲に隠れて彼の顔が見えるようになる。壊れたのか落としたのかサングラスはなく、水色が激昂に染まっていた。
彼の感情に呼応して黒い光がそこらで弾ぜる。
それを見て、彼は忌々しそうに吐き捨てた。

「何故あの時俺を放っておいてくれなかったんだ!何故死なせてくれなかった!?」

慟哭に近い叫び。
ハルミの予測は確信となって。
彼は首を曲げて頭を抱え、何もかもを拒絶して言う。
「もう沢山なんだ、要らないんだ!死んでしまいたかったのに、何で俺を生かしたんだっ!」
バチバチと光が弾ぜる。
彼の感情に呼応するそれは、真実彼の望みを反映してすべてを拒絶しようとしているのだろう。
叩きつけられる感情、向けられる激情、悲痛な叫び、涙なき哀願。
すべてがハルミを見えない矢で貫くような錯覚。
その衝動、感情に覚えがあるだけに、胸の痛みは更に増す。
熱いものが目の奥で凝って実体を持ち始め、ゆっくりと立ち上がった時には眦から一筋零れ落ちていった。
ダメだ。ここで泣いていいのは彼だけの筈なのに。
そっと、腕を彼の腕へと伸ばす。触れるか触れないかというところで、彼はハルミの腕を払うようにして一歩飛び退った。
数瞬水色が驚きに揺れる。が、すぐに剣を孕んで歪められた。
何故そんなに自分を責めるのか。もっと自分を許していいのに。
それは、ハルミがずっと抱かれてきた願いで、まさか抱く方になるなんて思いもしなかった。
やはり似ている、自分達は。こんなところまで似ていなくてもと思うが。
彼の考えていることは大体分かる。そして彼を苦しめているのは自分だ。身勝手な願い<エゴ>、本来なら大神が干渉しない些細な事象。
けれどハルミは、大神である前に一人の人間で。
だから自分は、いくら恨まれようとも。

「――貴方に、生きていて欲しかったから」

瞠目される水色。
それに移り込む自分の青と銀。
まっすぐに移り込む青に、水色が僅かにたじろいだ。
「ごめんなさい。……でも、私は貴方に生きていて欲しかったの。貴方の死を感じて、居ても立ってもいられなかった。無我夢中で貴方を呼び戻して……。世界も何も関係ない、私が、貴方に生きていて欲しかったのよ」
「だが俺は、そんなこと!」
「解ってる」
息を呑む気配。
痛い程の静寂がハルミの首を絞め、声を奪い、呼吸をも奪われかけているような気がした。
彼は、多分気付きかけている。
この遣り取りに、既視感を感じている筈だ。
再びそっと近付く。また、距離が縮まった。
左手を伸ばす。今度は振り払われない。
ふわりと頬に触れて、微笑いかけた。
「あの時、貴方が私にくれたコトバ。まさか私が、貴方に返す日が来るなんて」
「あ……」
「思い出した?」
「俺、は」
戸惑いがちに瞳が揺れる。
そろそろと彼は右手を持ち上げて、恐る恐るハルミの左手に掌を重ねた。
何かを確かめるようなそれに、ハルミはじっと彼を見つめた。
本当は怖くて怖くて仕方がないのだ。
完全に拒絶されてしまう事が、憎しみを向けられてしまう事が、何度でも死ぬと言われてしまう事が。
もし、に怯えて。でもそれをひた隠して。
ただ、願うだけ。
自分が彼の言葉で救われたように踏み留まれたように、彼を救えなくともせめて生きていたいと思ってくれたなら。
「私は、嫌。貴方の存在がないなんて、考えたくもないわ……」
「ハルミ……」
「勝手だってわかってる。でも、でもね、私は……!」
「――っ」
重ねていた手を掴まれて引かれ、突然の事態に何をされたのかあまり理解しないまま、気付けば彼の腕の中にいた。
強く、強く抱き締められて、呼吸もままならない程に。
なんとか顔を出して気道を確保すれば、彼の体が震えている事に気付いた。
「……怖いんだ。また、もしまた…………」
「……だいじょうぶ。私が、いるもの」
「でもっ」
「オルタナ」
弾かれたように顔を上げて、彼はハルミを覗き込む。
彼の“また”には様々な意味が込められているように感じた。
それらに対する恐れを、少しでも和らげる事が出来たら。
「何度だって、私は手を伸ばすから。何度だって、貴方を望むから」
貴方は、掴んでくれるのかしら。
貴方は、聞き入れてくれるのかしら。
あの時と同じように、私を望んでくれるのかしら?
「だから、もう、自分で自分を殺さないで……!」
彼の背に手を回して、なくならないように失くさないように力を込める。
言葉は言霊。力ある自分が紡げば、願いは現実となるのだろうか。
もう、あんな心の底が冷えきるような思いはしたくない。
「戻りましょう?今日は一緒に寝ましょうか」
「なっ」
「あら、何真っ赤になってるの?目覚めたばかりの頃はよく一緒に寝てたじゃ」
「わーっ!分かった!戻るから止めてくれっ」
「……今思い切り抱きついてる人の言う言葉?」
「えっ?わっわあっ!」
思い切り飛び退いた彼に苦笑が漏れる。
だが、気を紛らわせる事は出来たらしい。
安堵の息を吐いて、彼の腕を握る。
「取り敢えず行きましょ。今カフェ人手が必要なのよ」
「ちょ、俺そういうの苦手……っ」
「いいのいいの。傍にいてくれるだけでいいから、ね?」
「お、おう」
耳まで赤くなった彼がおかしくてくすりと笑う。
どうか彼の心が、いつまでも穏やかでありますよう――…。
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