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少年陰陽師、オリジナル、偶にその他版権のネタ置き場
  2024/04/27 [19:34] (Sat)
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  2010/03/18 [21:25] (Thu)



神域に帰ろうとしたオルタナの聴覚が僅かな音を拾った。
それは本当に微かな音で、オルタナが気付けたのも驚きな程。
意識して音を拾い上げる。そして気付いた。何故オルタナの意識に引っ掛かったのか。

「あいつの歌と同じだ」

引き寄せられるようにその音の許へ跳んだ。
ドアプレートには825の数字。彼女の部屋よりも高いのか。
ドアを開けず中へ跳ぶ。ハルミの部屋と間取りは同じようだった。
しかし奥に進んでも人は居らず、カーテンも遮光なのか陽光も差し込んでおらず、人工的な光が部屋を満たしている。
振り返り、通路の途中にあった二つのドアの一つの前に立つ。どうやらこの中から音は聞こえてくるようだった。
再び中へ跳ぶ。そして、言葉を失った。

「何、だ……これ」

部屋は薄暗かったが、中央に置かれたベッドの上はぼうと淡く浮かび上がって見えた。それが異常な程に白い人体の所為だと気付く。
そしてその人体から無数のコードが延び、ベッド脇にぐるりと置かれた機械に繋がっていた。見ていて気持ちの良い光景ではない。
部屋の隅にあるスピーカー。それからこの音は流れていた。音色からして自動演奏の電子オルゴール。
ふわりと浮き上がって、人間を覗き込む。痩せこけているがどうやら女らしい。
宙を見つめる瞳に生気はなく、クリアブルーらしい色さえ褪せて見える。広がる髪はくすんだ銀色をしていた。
言い様のない不快感が喉元まで押し寄せる。
これ以上留まっているのも嫌で、オルタナは其処から跳び去った。







神域へ戻る前に、オルタナは白磁病棟の屋上に立ち寄った。
目を閉じて神経を集中させる。すべてを見渡すように。

「……こん、な」

足下に広がる無数の病室。そのほぼすべてが薄暗いか人工の光に満たされていた。人々は揃ってベッドに横になり、生気のない瞳を宙に向ける。
先程の女が異常なのではない。ハルミの方が異常なのだ。
込み上げる吐き気に耐えられず視界を閉じる。今見た光景を消し去りたくて、今度こそ神域へと跳んだ。
耳の奥に、機械的なオルゴールの音色が残っている気がした。
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