2008/06/29 [23:39] (Sun)
【オリジナル】オルハル
「ねぇ、もし私が死んだらどう思う?」
「――…ぇ?」
突然のそれに、数瞬思考が停止した。何を訊ねられたのか、理解するのを拒んだかのように。
訊ねた時のまま真直ぐ自分を見上げてくる青の双眸に縫い止められる。
「な、にを……」
冗談だろ?と笑い飛ばしたいところだが――たとえ冗談でも許しがたいが――彼女の雰囲気や表情がそれを許さない。
彼女は本気なのだ。
「私の願いが“死”だっていうのは、オルタナも知ってるでしょう?」
「だけど、だけどハルミ…っ!」
顔がかっと熱くなる。鼓動は急いて、酸素を欲して呼吸が疾走を始めた。
手先足先は熱を持って脈打っているのに、体の芯は氷のように冷えきって、背筋を嫌な汗と氷塊が滑り落ちる。
彼女が死んでしまったら、なんて、そんな事。
「考えるのも嫌だ、そんな事! 考えられる訳がないっ!」
何をこんなに激昂しているのか、自分でも分からない。
ただ、考えたくない。脳が、否、オルタナ自身がそれを拒絶しているから。
彼女を失うのは嫌だ。
だから。
縋るように、引き留めるように、無我夢中でその細い体を掻き抱いた。
言葉にならずに体中を駆け巡る沢山の思いのありったけを、どうか伝わってくれとぶつけた。
彼女に伝わっているだろうか。
ただただ抱き締めた。
逃すまいと。離すまいと。
そうしなければ、今直ぐにでも彼女が消えてしまいそうで。
そんなのは、そんなのは。
「…嫌だ、嫌だよハルミ……」
喉から絞りだした声は予想以上に擦れ震えて弱々しく、内心情けないと自嘲の笑みを零した。
頼むから、頼むから、どうか。
どうか消えてしまわないで、行ってしまわないで。
君が死を望み続けるのなら、僕は生を祈り続けるから。
どうか生きて。
エゴにも似たこの願いを、聞いて欲しい。
自分の願いはそれだけだから。
掻き抱いた彼女の体は、心地好い程に暖かく、先程のやり取りはすべて夢でなかったかと錯覚しそうになる。
ぱた、と耳元で音が弾けた。
はっと現実に引き戻される。
肩口に感じる生温かなものが何なのか気付くと同時に、いつのまにか彼女の両腕が背に回されている事にも気付いた。
「ハル、ミ…?」
ぎゅ、と抱き締められる感覚に、先程までと違う理由で心臓が破裂しそうになる。
眩々と目眩がした。
「……あり、がと」
消え入りそうな彼女の声は僅かに震えていた。
自分はただ、それにゆるゆると首を振った。
「……生きて」
彼女に負けないくらい小さな声で紡いだ言の葉に、自分の持つすべての感情が集約されているように思った。
その一言が、彼女へ何もかも届けてくれるような気がした。
「生きて」
今度はしっかりと、力強く。
届け。
「――……誓う、わ」
ああ、なんて。
生きる決意の美しい事だろうか。
悲しみも苦しみも切なさも痛みも何もかもを昇華させて。
生きる事を、彼女が心から笑ってくれたらいい。
その日は二人、まるで祈るように暫らく抱き合ったままでいた。
+++
夢子さんに送った時のまま。
なので所々変;
「ねぇ、もし私が死んだらどう思う?」
「――…ぇ?」
突然のそれに、数瞬思考が停止した。何を訊ねられたのか、理解するのを拒んだかのように。
訊ねた時のまま真直ぐ自分を見上げてくる青の双眸に縫い止められる。
「な、にを……」
冗談だろ?と笑い飛ばしたいところだが――たとえ冗談でも許しがたいが――彼女の雰囲気や表情がそれを許さない。
彼女は本気なのだ。
「私の願いが“死”だっていうのは、オルタナも知ってるでしょう?」
「だけど、だけどハルミ…っ!」
顔がかっと熱くなる。鼓動は急いて、酸素を欲して呼吸が疾走を始めた。
手先足先は熱を持って脈打っているのに、体の芯は氷のように冷えきって、背筋を嫌な汗と氷塊が滑り落ちる。
彼女が死んでしまったら、なんて、そんな事。
「考えるのも嫌だ、そんな事! 考えられる訳がないっ!」
何をこんなに激昂しているのか、自分でも分からない。
ただ、考えたくない。脳が、否、オルタナ自身がそれを拒絶しているから。
彼女を失うのは嫌だ。
だから。
縋るように、引き留めるように、無我夢中でその細い体を掻き抱いた。
言葉にならずに体中を駆け巡る沢山の思いのありったけを、どうか伝わってくれとぶつけた。
彼女に伝わっているだろうか。
ただただ抱き締めた。
逃すまいと。離すまいと。
そうしなければ、今直ぐにでも彼女が消えてしまいそうで。
そんなのは、そんなのは。
「…嫌だ、嫌だよハルミ……」
喉から絞りだした声は予想以上に擦れ震えて弱々しく、内心情けないと自嘲の笑みを零した。
頼むから、頼むから、どうか。
どうか消えてしまわないで、行ってしまわないで。
君が死を望み続けるのなら、僕は生を祈り続けるから。
どうか生きて。
エゴにも似たこの願いを、聞いて欲しい。
自分の願いはそれだけだから。
掻き抱いた彼女の体は、心地好い程に暖かく、先程のやり取りはすべて夢でなかったかと錯覚しそうになる。
ぱた、と耳元で音が弾けた。
はっと現実に引き戻される。
肩口に感じる生温かなものが何なのか気付くと同時に、いつのまにか彼女の両腕が背に回されている事にも気付いた。
「ハル、ミ…?」
ぎゅ、と抱き締められる感覚に、先程までと違う理由で心臓が破裂しそうになる。
眩々と目眩がした。
「……あり、がと」
消え入りそうな彼女の声は僅かに震えていた。
自分はただ、それにゆるゆると首を振った。
「……生きて」
彼女に負けないくらい小さな声で紡いだ言の葉に、自分の持つすべての感情が集約されているように思った。
その一言が、彼女へ何もかも届けてくれるような気がした。
「生きて」
今度はしっかりと、力強く。
届け。
「――……誓う、わ」
ああ、なんて。
生きる決意の美しい事だろうか。
悲しみも苦しみも切なさも痛みも何もかもを昇華させて。
生きる事を、彼女が心から笑ってくれたらいい。
その日は二人、まるで祈るように暫らく抱き合ったままでいた。
+++
夢子さんに送った時のまま。
なので所々変;
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